【INTERVIEW】30周年を迎えた突撃洋服店。オーナー安田美仁子さんの服・スタイル・思考を紐解く

【INTERVIEW】30周年を迎えた突撃洋服店。オーナー安田美仁子さんの服・スタイル・思考を紐解く

1985年に神戸旧居留地の大興ビルに誕生した突撃洋服店。現在は神戸・渋谷に店舗を構え、時代・ジャンル・カテゴリーに縛られず、服を超えたスタイルを独自の価値観で提案している。

今回は、渋谷10年、東京20年、神戸30年を記念した東京では初となるイベント 「安田美仁子の頭の中」の開催が決定。ファッションの楽しさは、人に興味を持ったり、自分を考えたり、生々しくさらけ出す事だと考えるオーナーの安田さんが、まずは私からという意味で、頭の中を公開。トークあり、インスタレーションありファッションショーありの、ファッションイベントとなっている。

古着屋の概念がない時代からお店をはじめ、これまで数々のチャレンジをしながら今もなお新しい価値観を追求している安田さん。ここでは多くの強く・美しい言葉を残しているツイッターの投稿に着目し、伝えたい・残したい言葉をピックアップしながらインタビュー。服のこと、スタイルを持つこと、そしてそれらを超えた生きる上での思考まで語って頂きました。

なお、イベントに合わせて公開されたドキュメントムービーでは、突撃洋服店の歴史やファッションの変遷も語られているのでそちらも必見です。

Words from twitter @minikoyasuda(https://twitter.com/minikoyasuda

東京・渋谷の古着屋「突撃洋服店」 時代・ジャンル・カテゴリーに関係なく、スタイルという価値観を提案

Tweet on 2016年6月15日
もともと古着は何万円もかけなくてもかっこよくなれるよっていう精神の元その辺のストリートから生まれたファッション。
だから今でも生きて行く上で出くわす、”そうじゃないよな”、っていう違和感があるから続けられるんだなと思う。

− 1985年にお店をオープン。どうして古着屋を?
80年代は、日本人デザイナーが海外でも認められてきて、ストリートファッションが出てきた時でもありました。そんな中デザイナーブランドが、それぞれの個性で表現していたことに影響を受けています。デザイナー自身がロンドンで買い付けたアイテムでコーディネートを組んでいだり、インポートブランドを買うことも始まった時ですね。私はまだ若かったので高いものが買えなくて、でも、お金をかけないで格好良くできるんじゃないかと思ったのがきっかけです。

− 生きて行く上で出くわす違和感とは?
お店を始めた当時は、古着屋という概念や、ジャンル自体がなかったんで、おもしろいと思うものを集めるという感じでした。その後、80年代90年代に古着バブルがきて、ジャンルができ、大量に古着が出回るようになりました。ここで言った違和感は、せっかく自由な古着なのに、大量生産品と同じような流れになっていることに違和感があったことを覚えています。

− おもしろいものとは?
何年経っても、誰が見ても格好いいと思えるもの。今のものは1,2年でデザインが古く見えるし、消費も早いですよね。いろんな場所・時代に作られたもので、どんな年代の人でも、ジャンルも問わず、男女も問わず着れること。その中から、こんな仕事だからこんな服を着るべき、ではなく自分で選ぶことが大事だと思っています。

東京・渋谷の古着屋「突撃洋服店」 時代・ジャンル・カテゴリーに関係なく、スタイルという価値観を提案

Tweet on 2015年4月16日
違和感がなくなると人は考えなくなる。だから違和感は大事。

− ここでの、考えるための違和感とは?
自分が成長するにつれ、どんどん洋服が消費されていくことや、周りの価値観に翻弄されていることに感じた違和感です。自分の価値観で選んでいればどこで買ってもいいんですが、どこか誰かのとか、どこかの団体に合わせていっているのを感じます。しっかり自分を持つことと、それを確認し続けることが大事だと思います。

例えば同年代の人が服を買いに行かなくなったと聞いて、なんで自分に興味を持たなくなったのかを考えたり、大学生が3年生になってリクルートスーツを着るけど、実際は誰もそんなルールは決めていないですよね?

お店に入って来てレディースのお店だねって帰る方もいるけど、そうじゃないものに辿り着けるか。どうしても人は訳のわからないものは、わからないものとして処理したくなるんですが、60%が男性客だという話をすると、そうなんだと自然に見れるようになる。人はもっと、自分が知らないものを持っているということに気づいて欲しいです。

東京・渋谷の古着屋「突撃洋服店」 時代・ジャンル・カテゴリーに関係なく、スタイルという価値観を提案

Tweet on 2016年10月8日
やり方は真似できる。でもセンスは絶対真似出来ない。

Tweet on 2016年9月14日
本来個性とは滲み出てしまうもの。まねしようにもまねできない部分。

Tweet on 2016年9月1日
ファストファッション世代 (20代前半) が人と被りたくないって言い出した。いい傾向。人と被らんって事はより自分を考えなあかんからね。古着は人と被らんよ。

− 個性とは?
派手なことが個性があることではなくて、目立つ服がそうな訳でもないです。例えば、アクセサリーを男性に見てもらって、最初に選んだものが個性が現れる瞬間で、男女を区別せず自由に選んだ時に、ついつい出てしまうものが個性だと思います。

美術館でどの絵が好き?って話をして選んだものは、必ず理由が自分の中にあるし、自分にしか出来ないこと。その感覚を見逃さないようにすると、視野が広がりますよね。

東京・渋谷の古着屋「突撃洋服店」 時代・ジャンル・カテゴリーに関係なく、スタイルという価値観を提案

Tweet on 2017年1月21日
人から見たら価値がないと思われるような事を淡々とやり続けることが創造力。

Tweet on 2016年8月8日
いい仕事というのは完成しない事。完成しないから続けていける。

− この言葉に勇気付けられる人は多いと思います。
古着屋を30年もやっていて、よく飽きないなと思います。服を探すのは本当に大変なことで、今53歳になりましたが、普通はこんなことやってないですよね(笑)。海外に買い付けに行くって華やかな印象を持たれますが、実際は黙々と服を見続ける地味な仕事で。古着は昨日と今日で見るものが違うし、もっといいものがあったんじゃないか、もっと出来たかもと、やりながらも後悔するというか。今でも毎回仕入れの時は、この服が売れるのかと不安になります。

ただ、ずっと続けていると見えてくるものがあって、賛同してくれる人も増えてくる。お店もいつまで経っても完成はないし、だからこそ面白く、ずっとできるんだと思います。

【INTERVIEW】30周年を迎えた突撃洋服店。オーナー安田美仁子さんの服・スタイル・思考を紐解く

Tweet on 2017年4月9日
服を選んだり、買うという事はめんどくさい事なのです。めんどくさい事を受け入れ乗り越えて行かないと自分のスタイルなんか出来ないんです。

Tweet on 2015年4月13日
ファッションは本来衝動的で挑発的で人それぞれが持つ本能のようなものだと思います。
めんどうでも一生付き合っていくような本能。
そして本能を研ぎ澄まし察知出来るのは生き物の力。人間の力。

− めんどくさい事を経てスタイルができるというのはとても共感します。
めんどくさいから、服を買わないし、お店に行かないってなってるんだと思うんですよね。手段として簡単なものに移るというか、それで服を選ばされているし、面白くなくなっていると感じるんだと思います。面倒なことをやれるのが人間力で、本来、人間関係も恋愛も面倒なこと。自分が納得することは、めんどくさいことをやれるかということで、その納得出来ない気持ちは見逃さないようにしないといけません。

ものが多くて便利なときこそその感性は重要で、自分から歩いてこそ想像していなかった人と出会えます。AI(人工知能)でいろんな処理ができるようになる時代で、人間があるべき姿は、人にしか出来ないことをやること。それはもっとあると思っています。

− 最近は、服がヴィジュアルとして消費され、その先まで考えることが減っている気もしています。
服が好きとか言っちゃうじゃないですか。そしたら服が嫌いになったら辞めるのかって話なので、私はたまたま服だっただけで、別に服の話をしてないかもしれないです。

− これまでとても多くのチャレンジをされてますが、その原動力は?
伝えたいんですかね。ただ、根本は自分を認めて欲しいということだと思います。元々古着が面白いと思って始めましたが、80年代90年代に古着屋の概念が出来た頃には、当時っぽい古着らしい古着は着ていませんでした。周りにどうして?と聞かれましたが、自分はどうしても今っぽい古着を着たくなかった。その時はまだ古着を着ることで表現が出来なかったんですね。

− 属することでの安心、逆に個性を出すことの恐怖もあると思います。スタイルを持つことで何が変わるのか、それを伝えるとしたらどんな言葉になるでしょうか?
役割が先に来てしまう社会において、自分自身にしかないことを見つけることは、本当の自分でいられる自信がつくことに繋がります。
どこかで本音と建前が崩壊することがあるじゃないですか、人間関係で(笑)。崩壊しないように頑張って、言ってしまえば一生建前で居続けたりもしますよね。例えば男性が退職したり、女性は子供が巣立って何もすることがなくなったっていう話が今多くなってますが、これは相当真髄を突いていると思うんですけど、若い時から自分を見つめて掘り下げておかないと。絶対に自分のことを考えなきゃいけない時ってくるから。今はしっかりと意見を言わないと通らなくなっているので、それは洋服がきっかけでも、なんでもいいですが、どこかでそれは考えなきゃいけない事だと思います。

ファッションの楽しさは、人に興味を持ったり、自分を考えたり、生々しくさらけ出す事だというオーナーの安田さん。たまたま面白いと思ったものが古着であり、それを媒体に自分のスタイルを作ること、意志を持つことを体現してきた。服の話のようでそうでない、生き方を含めた言葉の数々には、日々考え行動してきた、実体験に基づく説得力と強さが宿っている。

なお、今回のインタビューは、2017年5月17日(水)に渋谷のアツコバルーで開催する、渋谷10年・東京20年・神戸30年を記念するイベント「安田美仁子の頭の中」の直前に時間を頂き実現したもの。同イベントは、トークあり、インスタレーションありファッションショーありの内容となっており、文字通り安田さんの頭の中が公開される。

突撃洋服店 渋谷10年・東京20年・神戸30周年の記念イベント「安田美仁子の頭の中」 開催

突撃洋服店 渋谷10年・東京20年・神戸30周年の記念イベント「安田美仁子の頭の中」 開催

東京・渋谷の古着屋「突撃洋服店」 時代・ジャンル・カテゴリーに関係なく、スタイルという価値観を提案

東京・渋谷の古着屋「突撃洋服店」 時代・ジャンル・カテゴリーに関係なく、スタイルという価値観を提案