oldhoney(オールドハニー)が、ブランド初となる直営店「81(エイトワン)」を渋谷にオープン。

【INTERVIEW】10周年を迎えた oldhoney、直営店をオープンし新たな10年へ。

oldhoney(オールドハニー)が、ブランド初となる直営店「81(エイトワン)」を渋谷にオープン。店舗には、オールドハニーのコレクションや1点ものに加え、新たにスタートしたブランド「Dear Episode(ディアエピソード)」が並びます。

今回は、デザイナーの原さんにインタビュー。10周年を迎えたブランドのこと、新店舗に新ブランドをスタートすること、さらにはクリエーションについて伺いました。

oldhoney(オールドハニー)が、ブランド初となる直営店「81(エイトワン)」を渋谷にオープン。※お店の住所である、渋谷区鶯谷町8-1 からとった店名の「81(エイトワン)」。

➖ 設計のイメージは?

お店を持つ目的としては、お客様とのコミュニケーションだったり、ゆっくり時間を過ごしてもらいたいというところがありました。なので、少し座れるスペースもあって、例えば、お連れさまは気にせず座っていられたりと、そういった空間でありたいっていうところは前提に置いてますね。

内装は、元々の天井の高さや大きい窓を活かしつつ、整いすぎないコンクリートの質感や、スチールなどの金属味、剥き出しの配管や、壁の質感で、”装飾的でありながらも甘すぎない”という、普段はルックで表現している雰囲気を出しています。

什器はクリエイターの須山成生氏ににお願いしたのですが、少し大人っぽくメンズっぽい雰囲気にして、そこにオールドハニーの装飾的で甘さのあるお洋服が入ってくるところが、私の中のちょうど良さでした。

➖ 新しいブランド「 Dear Episode(ディアエピソード)」はどんなブランドですか?

いわゆるシーズンを問わず、定番の型で作る完全1点もののブランドです。パンツやレギンス、スカート、トップスなどの定番の形はありながら、ひたすら古着をカスタムすることで1点ものに変わっていきます。

小物は、巾着やウォールベース(額縁の花瓶)、アートボードなどで、ウォールベースはディアエピソードの思いにもあるのですが、下げ札などには元々のお洋服の写真を貼るなどしてエピソードを感じられるような演出をしています。

こちらは、お店にお客様とお話ができるスペースがあるのもそうなのですが、オーダーメイドができるようにしていきたいと思っています。

例えばお気に入りだけど首元がよれてしまったTシャツってあるじゃないですか。その方だけの思い入れ、エピソードがあるような。手放せないけど、着れないものを、別のものに変えていけたらいいんじゃないかなっていう意味も込めて、ディアエピソード。

意味合い的には、誰かの手放したお洋服が新たに形を変えて、 また別の人の特別なものに変わるということなんですけど、オールドハニーとはリンクしながらも、フリルとかではなく、服自体のセカンドストーリー、古着たちのセカンドストーリーを提案をできたらと思い始めました。古着が好きでこの業界にはいったので。

アートボードも私が作ってるんですけど、お好きなサイズでオーダーいただけます。こういった洋服以外の元々好きなコラージュ作業も、ここではふんだんにできるのかなって思ってます。

小物や雑貨もあって、トップスもメンズが着れるようなサイズ感にはしているので、オールドハニーを知らない方が、この場所に来てくださったらっていうのが1つの目標としてあります。

➖どうして今お店を?

20代はオールドハニーをやってきて、ちょうど10年が経ちました。30代が今年スタートするのですが、もう一踏ん張りするなら、新しいことを始めたいなと。モチベーションというか、もう一度チャレンジですね。

オールドハニーの着地点としてパリコレを目指したりすることではないと感じていることも1つですが、1点ものやクチュールよりの特別感が強いアイテムの制作だったり今回のディアエピソードのような取り組みだったり、服以外のものを作ってみたかったり、いろんなことをしてみたいっていう中に、やっぱり箱は必要だというところでしたね。

➖ オールドハニーのコンセプト「日常に特別を添える服」について、ブランドを知らない方のためにも聞きたいなと思って。どういうメッセージですか?

フリルやリボンなどの装飾性が原らしさだよねと学生時代から言われていて、自分の強み・個性をものづくりをしながら気づいていった部分がありました。

ただなんとなく過ごす日というよりは、お出かけする日だったり、思い入れのある日、特別なシーンに着ていってもらいたいなっていうところからですね。

なので、写真を撮ったりとか、背筋が伸びたりとか、お洋服があることによりスペシャルになる。そういったところから、「日常に特別を添える服」というコンセプトができています。

あとは”装飾的でありながら甘すぎない”というキーワードが加わったりしますが、フリルやリボンというと、可愛らしさや甘い印象が強く持たれるところを、少し引き締めるような。フリルだけど、そこまで甘すぎないようなものに昇華したいと思っています。


➖ インスピレーションはどこから?

街中の人たちにデザイン途中のものを頭の中で着せたりしてます。もっとこうした方がいいんだろうなとか、こういう子たちなら、こういうラインがあったらいいんだろうなとか、ディテールはこうがいいんだろうなとか、街中の人をひたすらオールドハニーに着せ替えしてますね。

やっぱり浮世離れしすぎてると、浮かばないじゃないですか、着ている人が。服作りをする中で、もちろんミューズは別にあるんですけど。

➖ そのミューズはどんな人ですか?

儚さと芯の強さが共存しているような、少女性がある女性像が軸にあります。個性的で派手なお洋服ではあるので、人と被らないことや服を自己主張の一つとして認識している方というのもありますね。

➖ 全てのアイテムに、装飾性の高さを表す温度がついています。すごい発明だなと思ったんですが、どんな経緯でしたか?

本当に当時のひらめきだったんですけど、装飾的でありながら甘すぎないという、甘さの表現をどのように伝えていきたいんだろうって。

全てが重いアイテムだとコーディネートが組めないとか、 少し甘さを抑えなきゃいけないこともあるなと引き算を考えてる時に、装飾性を数字で表せたらいいのにというところから、温度の発想になりました。

温かいものは温度が高くて、冷たいものは温度が低いみたいな度数からもらって、100度を沸点で考えて、その中間の50よりは高いところがこのブランドのアベレージだなと。

そして、コラージュを施した58℃カットソーからスタートしました。

➖ 装飾性の温度、その基準は?

どちらかというと盛り具合の意味合いが強いので、ハンドやフリルだったり、リボンなどの手作業の多さ。手でニュアンスでつけているものは、結構温度が高いですかね。

➖ 〇〇℃のアイテムを作ろうと思って作ってますか?

作ってないです。基本的には温度の高いものからデザインを考えて、コレクションの場合はそこから引いてバランスを取っていきますね。

➖ 自然に作ると温度が高くなる?

好きだなって思うものは温度が高いものですが、量産が難しかったりするので。あんまりたくさんは入れられないんですけど。

コレクションはそこにリアルさを入れていくような作り方をしていますが、それでも他のブランドさんに比べたら全体的に盛り盛りなので、そこはもう私の感覚が麻痺しているので(笑)。

ずっと継続しているリメイクやハンドメイド。製作的にも大変だと思うのですが、なぜやるのですか?

なぜやるんだろう。考えたこともないぐらい自然にやっていたことです。ただ1つは、私が元々服飾の学校がスタイリスト学科だったことがルーツとしてあると思います。

お洋服を作りたいと思って入った業界ではなく、どちらかというと古着が好きで、お洋服の組み合わせや、コラージュの作業がメインだったので、パターンを緻密にひくことにすごく力を入れてきた人ではないということが1番だと思います。

デザイナーとしてはコンプレックスでもありますが、リメイクっていう手法は解体して、感覚的に組み合わすことができる。自分にとってはフィットした手法でしたね。

全てが揃って始めたブランドではなかったので、やりながら、成長させてもらいながらでした。スタート時はパターンを引いてトワルを組んで、1着1着作っていく時間がとれなくて。とれないというよりかは1人でやっていくなかで業界のシーズンに合わせていくとなると、人より得意な部分で勝負をするしかなかったんです。それが直感的な組み合わせのリメイクだったり、ビーズをつけたりステッチをいれたり。

それがブランドのベースになったというのもありますけど、手縫いが楽しいってのがブレずにあるので続けてますね。

➖ それは飽きずに続けられてるんですね?

手を動かしていると安心します。もちろんコレクションを続けることは苦しいこともあるんですけど、苦しさだけが出てしまうと、続けられないので。手縫いがあることで、あ、やっぱ作るのが好きなんだなと再確認している感じです。

➖ ブランドが10周年。この10年で作りたいものや作るものに変化はありましたか?

10年を振り返ってみると、途中の記憶がないですよね。特に最初は作りたいものではなく、作れるものからのスタートだったので。技術も足りてなかったですし、当時は学生で始めさせてもらっているので、ブランドネームってどこでどう作るんだとか、品質表示って何入れればいいんだとか。なかなか学ぶ時間もなくて、模索しながらでした。

何を作ろうとか、お客様のことを考えて提案したいとかに至ったのは、本当に4年前とか。作りたいものを少しずつ作れるようになってきたという感じですね。やっとそういう背景を知れるようになったのが10年目です。

だから、ある程度自分の癖も出てきてますし、自分の感性をどういい意味で裏切っていけるかという課題点が今。

また、私自身が10歳年をとったことが実感としてあって、ブランドが1番刺さる20代前半の子とのギャップを、埋めていく必要があるかもわからないですけど、当時のオールドハニーと、 今自分が作りたい、欲しいものの差は出てきてると感じます。

でも逆に、お店ができたからこそ、シーズンはもう少し温度の高いものは振り切っちゃってもいいかなとは思ってますね。

今回、100℃ オーバーというよりスペシャルなものを製作するラインも作ったので、コレクションは85℃くらいがマックスの雰囲気を保ちながら
100℃overで思いっきり作りこんでいけたらと思っています。

ただ感覚値なので、お客様からしたらこれも100℃超えてるよなんてこともあるかと思いますが。笑

➖ これまで無かった100℃オーバーの服が初めて登場しました。込めた思いなどありますか?

100℃オーバーは唯一の自分のファッション的な部分ではあると思いますね。日常的なものでどうぞってわけではなく、言ってしまえば、誰が着るのっていうものを作り続けていく。

これはこちら側のエゴではあるんですけど、100℃オーバーのものって、魂を感じられるものを作らなければいけないという。自分の中での”元々好きなものをちゃんとやれよ”という取り組みでもあって、すごく苦しいですし、楽しいことです。

たまにあまりにも圧倒されて気持ち悪いなって思う作品、アートと出会うじゃないですか。そういったものには魂があると思っていて。

学生の頃、講師に「原はどれだけ作り込んでも気持ち悪いものにはならないから、とことん作り込んだ方がいい」って言われたんです。「それってすごいことだから」と。

その言葉があったので自分の感性を信じてこれたという部分もありつつ、今は作り込みすぎだよ、ってその作り込み具合にいい意味で引かれるくらいのものも作ってみたいです。100℃オーバーはその為の枠です。

多分私の感性の表現方法は、パールやフリルなど大勢の方が可愛いって言えるようなものだと思うんですよね。なのでより作り込みが大切だなと。コレクションでは中々表現できないので。

できれば2.3ヶ月で3着とかぐらいのペース感で、100℃オーバーが作れればいいなと思ってます。

➖ ものが溢れている時代で、新たにものを作る。矛盾がある中での葛藤や思いはありますか?

ここって言葉にするのは怖いですけど、私の場合は、自分の作ったお洋服が在庫として残ることはすごくストレスです。

もちろん、今、受注生産のみのブランドさんも多くあるかと思うんですけど、私はそれだけにするのも怖いと思っていて。やっぱり作り手ってある程度どうだっ!ていう感じで、それなりのリスクを負いながら、自信を持って展示会で出すところってあると思うので、売れるなら作りますっていうことは、あまり思ってないです。

という中では、どうしても在庫は出てきてしまうので、 私はそれを再構築をして、1点物に昇華していたりとか。なので、1点物に関しては、新たに物は買わないようにしていますね。それはもうこちらのエゴですし、もちろん伝える必要はないと思ってもいるんですけど。

新たに物を作ることは、やっぱり毎回つっかかります。なので、ディアエピソードみたいなブランドのコンセプトになってくるんだと思うんですけど、 それがサスティナブルを全面に出すと、また私の場合は違うんです。なので、自分からは言いませんが、結果そうだよねって言われたら、もちろんそうなんですけど。第一にそこではなくて。

➖ わかります。サスティナブルという言葉が出てきてリメイクもそのカテゴリーのようになってますが、作り方は関係なく、昔からデザイナーは大事にデザインして大事に作ってるとは感じています。

やっぱり、昔から古着のリメイクが好きだけど、それがサスティナブルなんて思ったことは、当時も1度もなかったです。どちらかというと、やっぱり1点ものの価値だと思ってたので。

人と被らないとか、1点しかないっていう、その出会い。1点しかないものに心惹かれる部分って、やっぱり出会いだと思うんですよね。古着と同じような感覚なので、それがサスティナブルだからいいって思ったことはないんですよ。それは作り手になっても変わらないです。なので、ブランド側としてはその言葉は私はなかなか言えなくて。

それよりもときめき具合ですかね。コラージュ感覚、ここにしかないデザイン性、色合わせとか、偶発的なものの良さっていうところですかね。もちろん新しく生地を買うことよりかは、自分の中にもあまりストレスはないってのはありますけどね。

➖ それこそさっきのパターンの話じゃないですが、作りたいものを作り上げていくってより、コラージュ的という強みがあり、得意なとこだから。

そうですね。冷蔵庫の中身で料理を作るっていうのが好きなんですよ。何を作ろうと買い出しに行くんじゃなくて。それがなんでって言われて、本当にわかんないぐらい自然ですね。

ずっと続けているリメイクが、時代的にちょうど良くなってる部分は逆にやりづらさもありそうですね。

なんか最近多いよねこういうリメイクのブランドって言われると、またちょっと違うんだけどなって思いますけどね。でも、それは作り手のエゴで仕方がないこと。
お客様によってですが、ここまで作り込んでたら周りのと違うねって、感じ取ってくださる方に価値があればいいなと思います。

そういったところではない、元々こういったオールドハニーというブランドをやってる人間がデザインをするというところで、差が出せたらいいなとは思ってはいます。そういった意味で、ウォールベースとかアートボードのようにアパレルに特化しないで、新しく表現できたらいいなと思ってますけど。

やっぱり、そこにデザインを感じられるものは作るべきだなとは思いますね。自分の中でこれでいいや、にしないっていうところ。それは使命じゃないですかね、苦しいですけど。

81(エイトワン)
住所:渋谷区鶯谷町8-1

oldhoney(オールドハニー)
デザイナー 原まり奈
https://www.instagram.com/oldhoney.tokyo/

2012年にセレクトショップでの取り扱いを機にブランドを設立。
2014年 バンタンデザイン研究所デザイン学科に編入。Asia Fashion Collection (AFC)で入賞し、NYコレクションにて作品を発表。
2023年 直営店 81 オープン。新ブランド Dear Episode スタート。