【INTERVIEW】絵を描いて服をつくる「odd_(オッド)」プロセスをデザインする新しい視点

【INTERVIEW】絵を描いて服をつくる「odd_(オッド)」プロセスをデザインする新しい視点

プロセスを作るというコンセプトのもと、新しい視点を持って服づくりを行う「odd_(オッド)」。絵を描いて、服を造るというプロセスを経て出来上がるアイテムは、本人達にも予想がつかず、時に想像を超えるものが生み出される。

それは、元となる絵が通常のデザイン画のような服の完成形を目指したのものではないため。落書きであったり、文字であったりと、ドローイングとして絵を完成させ、そこに生まれた線を布に写し、生地をピン留めをして服の形を探っていくという、偶然性を持ったデザインのルールを楽しんでいる。

今回は、odd_のデザイナー タカヤマミチヒコ氏と、立ち上げ時より一緒に活動をしている7A氏にインタビュー。新しいアプローチで服作りに挑むブランドの輪郭を写し出せるよう、立ち上げから、プロセスを作ること、コレクションとブランドの今後についてお話を伺った。

【INTERVIEW】絵を描いて服をつくる「odd_(オッド)」プロセスをデザインする新しい視点(左から)7A氏、タカヤマミチヒコ氏

odd_の始まり

服を作りたいと思ったのはいつですか?
タカヤマ:高校生の頃、コンビニでアルバイトをしている時ですね。ドリンクのパッケージを見て、これも誰かが作っているし、コンビニの空間も誰かが作っているんだなと。そしたら自分も何か作らなきゃと思って。

その日、家に帰ってすぐ親に相談したら大学に行けと言われたので、じゃあ一般大学ではなくて、ものを作る大学に行こう、服が好きだから服を作る学校に行こうと決めました。

大学で服作りを、大学院で造形を学び、その後ブランドをスタート、自然な流れでしたか?
タカヤマ:服飾を学んだあとに造形を学び、その間も今のodd_となる活動はしていたので卒業後からをスタート地点とした、というのが実際かもしれないです。

自分がやる意味のある服作りを考えた時に、その方法が学校で教えられるものだけなのか?という好奇心から、服作りのプロセス自体を自分のオリジナルのものにできれば、そこから出来る洋服は自分の作品といえると考えた為、造形を学び、現在のodd_の形態になりました。その工程は必要であったので自然な流れと言えると思います。

ブランド名「odd_」について、意味合いや立ち上げ時の初期衝動はありましたか?
タカヤマ:奇妙なという意味の英単語で、奇数や割り切れないもの、そうじゃない方という意味です。自分というフィルターを通してものづくりをやるのであれば、自然と”そうじゃないもの”、”王道じゃないもの”になるだろうなと思っていました。始める際は、なんとなくのブランドのイメージはありましたが、実際は好奇心の方が大きかったです。

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違うところを、共感・共鳴する

どうして二人で活動しているのですか?
タカヤマ:二人でやろうというよりは、学生の時はもっと一緒に活動している人がいました。今はデザインと生産は僕が全てやり、どう見せるとか、誰にどんなことをお願いするとか、展示会での案内や説明などを7Aさんが担当しています。

7A:学生時代から仲のいい友達で、「モデルやってー!」「私着たい!」みたいな感じで毎度モデルをやったり、モデル以外の業務も手伝っていました。スタイリングも毎回組んでましたね。どういうものが上がってくるのか毎回楽しみで、私は普段から服の着こなしを考える事が好きだったので、適材適所といった流れで自然と。タカヤマとはA か Bかを選ぶ時に、それがかなり合う感覚は当時からありました。仲間たちがそれぞれの進路に行く中で、残ったのが二人だったという(笑)。今でも毎回楽しみながら、テニスのラリーのように対戦をしているような感覚です。

タカヤマ:自分でつくっていると、洋服的なイメージはなく、細部が決まっていくにつれて彫刻を作っているような感覚になります。そして出来上がった洋服の彫刻を7Aさんに着てみてもらった時に、石から布に戻ります。

服作りにおいて、意見の相違はありますよね?
タカヤマ:同じ答えを持っている部分と違う部分があるのは当たり前なので、違うところを、共感、共鳴し合うようにしています。

7A:違って当たり前と思っていることは、大きいかもしれません。1つの質問に関する答えは違うけど、まぁそうだよねって言える関係にある。作るものに関しては、相談されたら答えるし、相談した方が良いよとは言いますね。

タカヤマ:近い壁でもある7Aさんに説明して伝わらなければ誰にも伝わらないということと、相談して悪いことは何もないと思っています。

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自分だけの方法を探して辿り着いたプロセスという視点

どうしてプロセスに着目を?
タカヤマ:バイクに乗っていた時に、グラフィティで描かれていた”SPACE”という文字のAの部分がパンツにしか見えなくって。居ても立っても居られず試し布を持ってその文字の形を布に移し、洋服をつくりました。思えばこの頃からプロセスと洋服を別の物として見始めていたと思います。

その後は自分で絵を描くようになり、今もコンセプトとして掲げている“絵を描いて服を造る”という活動をするようになりました。“絵を描いて服を造る”という言葉が、一般的にはデザイン画を描いてから服を作ることを連想させるけど、実際は自分が絵(ラクガキ)を洋服の原型にしている意味の交錯も面白いなと思いました。

7A:そもそも絵を描き始めたり、こういう服作りになったのは、自分だけの服作りのやり方を求めていたから。服はたくさんあるけど、作り方は全部同じって不思議じゃないですか。既存のものづくりに疑問を持ったというと反骨精神などと言われますが、本当に単純な疑問を持っていました。

タカヤマ:そう、自分の方法があるはずと。自分が作らないと意味がないもの、自分だけのものってならないと、今、これだけ洋服がある中で洋服を作る意味が無いじゃないですか?

自分だけにしかできないもの、それを強く思ったのは、あるブランドの展示会に行った時です。”これは何十年代の服のディテール”と言われて、見たことがあると言ったら、”無いものです”と言われ違和感を感じました。参照している服があるのは当たり前で、その狭いくくりの中でオリジナリティを奪い合っていることが怖いと感じたことがありますね。

僕がやるときは人にこういうプロセスですと言えるものがいいと思いました。絵を描いて、服を作るという言い換えの面白さ、実際にどうなるんだという、好奇心がいつも一番大きいですが。

プロセスを大きく変えた絵。どのよな変遷で今のスタイルになったのですか?
タカヤマ:最初はフリーハンドで落書きを始めました。そのあと文字を書いていくのですが、なんで文字かといえばグラフィティーに重きがあって、住んでいる湘南に溢れている身近なものでした。僕は書いてませんが、パッとは読めないけど、仲間内では意味がわかったり暗号化されているのが面白いなと思って。また、街と一緒に歳をとって、誰も知らないものになるけど、時間が経つに連れて純度が上がる感じが好きなんです。絵については、文字を抽象化したものが最新の状態で、これをもっと追求してきたいと思っています。

フリーハンドから徐々に制約を加えていったのですね?
タカヤマ:基本的にルールがないと自由になれないというイメージがありました。また、ルールを作るならわかりやすい方が良いと思っています。

7A: 実際に無意識だけど手癖もあるじゃないですか?本当に無意識でやったのって言われるとそう言い切れない部分もあるので、それだったら文字ですって言った方がわかりやすくて。みんなが知っている形からやることもできるなと思って。

絵のサイズはどうしてこの大きさなのですか?
タカヤマ:服を作ろうというよりは、手の動く体のスケールで描いたためです。絵を描いているのは包装紙で、これはものを包む用途で、服と同じだなと感じましたし、作図用紙を綺麗に折って大切に保管する価値観も好きじゃなくて。強い紙に強いペンで書いて、四つ折り八つ折りで持ち運べる方が好きですね。

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新しいアプローチの服、どんな受け止められ方をしていますか?
タカヤマ:プロセスを楽しむ人と着方を楽しむ人がいるように感じますね。odd_の洋服は色々な着方を出来るものも多いので、自分なりの正解を着て楽しんで、プロセスを知って面白いものになればと思います。

プロセスを作るというコンセプトで伝えたいことは?
タカヤマ:“プロセスで遊ぶ”というコンセプトは一般的な服の作り方を知らない人には理解し辛い事かも知れません。それでも、服の勉強をしていない人にはわからないから伝えないというのはodd_を楽しんでもらう上では無責任だと思っています。

他にも、展示会では服はどれもS字フックで吊るしているので、パンツを探しているから、パンツだけを見ると言う見方から、どんなアイテムかは広げて見ないとわからない。という見方へ視点の変化を提供することで、想像して考えることに繋がればと。わかりづらくするつもりは無いですが、見てわかりやすい、見て意味がわかってしまうものではなく、わからないから考えるであるとか、無駄というものを楽しめる人が増えたらいいなと思います。

7A:そう、正解がわからなくてもファッションを楽しめるようにしたいです。それはodd_だから言えることじゃなくて、どんな服でも言えることで、それを敢えて言い続けています。

正解がないことは困ることじゃないんだよ、わからないことを楽しめる人、もの作りに興味を持ってくれる人が増えるように、決まったことじゃなくてもOKよと伝えたいです。

タカヤマ:洋服というものが、機能よりも装飾性を求められているような気がするので、それであればもっと自由に。ものづくりをしている人だけでなく、興味のなかった人が楽しめる、一緒に楽しめるブランドでありたいと思います。

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偶然性から生まれるシルエット、完成のポイントは?
タカヤマ:絵を描いて、気持ちの良いカタチが出来たら完成。今度はそのカタチを着られるようにしていきます。もちろん体を無視した作りにはならないよう技術的に補完しつつある程度ドローイングの形を保ったまま洋服にしています。

ある形をどんな洋服にするかと言うのは、何度も組んではバラしを繰り返して決定するのでポイントは自分でもわかりません。もちろん、なかなか服にならない絵もあって、一個描いたらそれを絶対に服にするということは無く、寝かしておいて、服になることもあります。とは言っても、締切に合わせて絵を雑にするのは以ての外ですし、絵を洋服に合わせていく事もありません。あくまで絵は描き上げるまで絵として向き合っています。

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さっきの袖のパーツ(上の写真、インタビュー中に新しい形を見つけた瞬間)に背中にパーツを当てたら一着作れた可能性もあって、あれはかなり良かった気がする(笑)。これも僕が作ったというよりも、ここにいる3人で作ったもの。ルールが好きで、完成した絵から形にするというルールがあるからブレずにできています。

7A:そう、ルールが完成を手伝ってくれている。

クリエイションにおいて最も感動する瞬間は?
タカヤマ:いろんなタイミングで感動します。服になりそう!と思った瞬間、ディテールになってサンプルが上がり服になった!という瞬間、それをどう着るかを考える時、服だ!感じる瞬間。衝動として強いのは、形になる前のものかもしれません。何かになりそうという無責任な興奮はあります。

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2019年秋冬コレクション

これまで新作を重ねていくという意味合いでナンバリングしたコレクションでシーズンレスに発表してきた同ブランド。2019年秋冬コレクションは、ナンバリングでの発表は継続しながらも、素材選びや発表の時期など、よりシーズンに合わせた発表を行った。

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コレクションのまとまりは考えますか?
タカヤマ:考えてないですね。前回はトップスが多くなってしまいました。

7A:ワンピースが作りたかったのに、生まれなかったねみたいな(笑)。

タカヤマ:そういう意味では思い通りになっていない、まだコントロールしていない部分でもあります。こういう素材でこういうアイテムがあったらいいよねとなっても、そのアイテムが生まれるかわからない。

7A:毎回、何ができあがるかわからない。今回に関してはボアが使いたかったので先に素材を絞りました。

タカヤマ:デニムとチェックとボアだけにすることで、より形に注目してもらったり、ほつれるような質感で縫った線を強調しています。

生地はシーズンに乗せることを意識しつつ、イメージとしてあるのは、プロセスを変えるという作り方が変わっているので、服に使われない生地だと衣装っぽくなってしまう。あくまでデニムなどの街中で見る素材を使うように心掛けました。

7A:変わった服の作り方で、変わった服っていうのは見ている人には伝わらない。それに変わった服を作りたくて変わった作り方をしている訳ではなく、変わった作り方をした結果どんなカタチになるのかわからない、というだけなので、そう見えないようにodd_のつくり方を変わってない生地、変わってないアイテムに落とし込んでいるつもりです(笑)。

【INTERVIEW】絵を描いて服をつくる「odd_(オッド)」プロセスをデザインする新しい視点

色のトーンが固有でありながら統一感がありました。
7A:配色はお互いの好みが似ていて、自然に選んでいます。組み合わせはタカヤマが苦手なので、任せる時もあれば、私はこの組み合わせが好きだよと伝えています。

タカヤマ:生地からできたものを想像するのが一番苦手で、7Aさんは選んだり考えたりするのが好きなので、お互いのバランスは自然と決まりますね。

7A:最近は、先に生地が決まっていることもルールの1つになりえてます。

タカヤマ:そう、何ができるかわわかならいけど、外側と内側を同時進行で進めて、、どこかでぶつかって出来上がる。ハラハラしますけどね(笑)。

7A:これスカートにならないけどどうしようとか(笑)。

タカヤマ:それめちゃめちゃ困るんですよね(笑)。でもやってみたら違ったというのは、どのデザイナーもそうだと思います。

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ルックについては?
タカヤマ:今まではロケが好きでやってきましたが、今回はある工場内だけで撮影しました。僕が製作している時に感じる違和感というか、普段物を作っている場所はお洒落でもなんでもない、でも出来上がった服はお洒落をする為の物でもある、その違和感を表現したいなと思いました。綺麗なものを作る場所は綺麗とは限らない。場所と一致しない女性が立っていることで、感じていた違和感を表現しています。

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ぬいぐるみのパターンから服を作る新しい挑戦

7A:簡単にいうと再構築で、ぬいぐるみのクマのパターンから服にできないかを探している最中です。

タカヤマ:ぬいぐるみの原寸から倍にしたパターンを使用しています。元々ぬいぐるみのパターンって、服作りから考えると狂っているなということが多くて、これを大きくしたら人が着れるのかという好奇心がありました。

7A:それは、自分が描いた絵を服にできるなら、元々ある形を服にできないかと、割と段階を踏んで考えられるようになってきた感じです。

タカヤマ:今回は自分で決められる部分も大きいので、色々なぬいぐるみを見ました。同じクマの形でも全然パターンは違って、高いぬいぐるみはやっぱりいいパターンなんだなと(笑)。

服になりそうですか?
タカヤマ:全部なります。

7A:ぬいぐるみは、あらかじめパターンから出来上がっているものなのに、同じパターンから次は何が出来るのかワクワクさせられるのが楽しいところです。普通にデザイン画を描いてから作っている人は、あらかじめ完成のイメージと想像通りになっている、なってないというのがある。想像通りの完成に向けて作っているのではなく、そうじゃないからこそ、ときめけるのだと思います。

タカヤマ:デザイナーのインタビューでよく、自分のデザインを超えていくことが重要ってありますが、それってどうやってやるのかわからないというか。

僕は服が作れるからこそ検討がつきすぎるというのもあって、それ通りに上がってくることが当たり前、実物になったという喜びはあっても、想像を超えることはないんです。
だったら僕は、自分の検討がつかないもの、自分が思いつかない方法で作った方が越えていけるなと。

7A:どこまでも正解がないものじゃないですか パンツと思っても、袖にもなりうるとか、そういうことに近いのかな、着地点も自分で決められる。

タカヤマ:それが苦手なことで、できれば何も決めたくないんです。なので決めるという行為そのものも仕組みに取り込み、制作についても1つの絵から1つのパターンと限定していました。守るべきルール(プロセス)が道筋になっていて、自分はそこを走る動力であれば良い。という様な。

自由だからいくらでもワクワクできますが、それはルールがあるから。毎回コンセプトがあって、だからこそ自由がある。

自分自身に対しても制限と自由という構図があって。悲観的だからどう楽観的でいるか、出来ないだろうと思うから、じゃあ何が出来るのかを考える。自分が描いた絵なのに自分が考えた事なのに、毎度驚かされ、想像を超えることがある。これがプロセスを作ることと楽しむことだと思います。

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odd_
https://www.instagram.com/odd_tokyo/
https://odd-doodie.tumblr.com/

odd_ ものづくりのプロセスを楽しむバッグのワークショップ 8/24(土),25(日)渋谷・神泉のR for D で開催
https://rford.deedfashion.com/blogs/news/odd-bag-workshop