日本の眼 十三 おぼろ
テーマの”おぼろ”というのは、デザイナー曰く「ものの見方だけでなく、相手との距離でもあり、また、夢や思い出でもある」という、掴みきれない言葉である。
そんな”おぼろ”を、儚げでも強さをもったミステリアスな女性像として描いた今回のコレクション。
スタイリングの肝となっているラビットファーのフェルトハットは、雲のように形を変え易く、目を隠すことで出すミステリアスな雰囲気に。また、淡くグラデーションのかかったグレーやブルーの色合いは、ろうけつ染め作家の中井由希子によるもの。墨を刷毛で塗ることで実現する溶けるような色彩は、素材と染料の相性から試行錯誤が必要な、まさに職人技の手仕事と言える。
なにが主役というわけでもなく、それぞれが美しさを秘めた個体であり、お互いに影響し合っている。その重なりこそが”おぼろ”なのかもしれない。
Text Koichi Kondo