CREATOR INTERVIEW vol.1 【ID】

デザイナー、フォトグラファー、スタイリストなど、それぞれのフィールドで表現を続けるクリエイターたちに、「今、何を考え、何を作っているのか」を、10の質問で聞くCREATOR INTERVIEW。

ジャンルを越えた表現者の価値観と制作の裏側を記録していきます。

vol.1は、2022年に始動したブランドID(イド)。
デザイナーとディレクターによるデュオでコレクションを制作し、「Daydream for them(さめてみる夢)」をコンセプトに、服だけでなく、映像やインスタレーションなど、媒体や形式にとらわれない表現を続けています。

独自の世界観でコレクションを構築するID(イド)に話を聞きました。

1. クリエイターを目指したきっかけは何ですか?

クリエイターを目指そうと思ったことはないので、わたし自身のクリエイションの原点の話になりますが、余白という概念には大きく影響を受けています。
わたしは高校生の時書道部で、毎日筆に墨をつけてひたすらにお手本の黒を真似して線を書いていましたが、ある時恩師に「描くのは黒(線)ではなく、白(余白)」と言われ、無意識だった余白という世界が意識の中に浮上してきたんです。
わたしはさっきと同じ場所で、同じお手本を横に置いて、同じ墨のついた同じ筆を握って同じ紙に向き合っているはずなのに、                  世界が全く変わったことに衝撃を覚えました。
黒い世界に垂れた白。
感覚と感覚の間に少しだけ白を垂らして、心地よく薫る何かが心に留まるように。
わたしのクリエイションのきっかけであり、軸だと思います。

2. 活動の中で大変だったこと・苦労した経験はありますか?

人間であること。
食事をしなければいけません。
睡眠をとらなくてはいけません。
いつも同じモチベーションのわたしではいられません。
いやだなあと思っていましたが、今は人生ゲームをやっている心持ちでいます。
人生というゲームで、わたしというキャラクターを育成している感じ。
結構おもしろいです。

3. 貴方の活動をどんな人に届けたいですか?そしてどんな思いで見てもらいたいですか?

ID(イド)に触れてくれた人がふと底に沈んだクリエイションを覗き込んだ時、その人の脳と感覚を掻き回し、打ち鳴らすような。
言葉も意味も、全てを理解する必要はないと思うのです。
ただ、無意識の一番奥に潜む形のないその存在を少し意識するだけで、意識という世界の下に無意識という世界が広がる感覚を描きたいと思っています。
わたしはそれを「- 5°」(マイナス5度)の概念として念頭に置いています。
「5°しか変われなくても、180°も変われなくても、-5°で世界は変わる」
いつも顔を上げて前を向いていなくてもいいと思います。
通ってきた道でも、後ろを振り返れば、反対から見る景色は違うものに見えるかもしれません。
下を向けば、薄膜の向こうに別の世界が広がっているかもしれません。
無意識を意識することで同じ場所に立っていても世界が広がり少しだけ呼吸がしやすくなるような、そんな感覚に結びつく誰かの記憶を紡げたらと思います。

4. 今後の展望を教えてください。

今まで少しずつ積み重ねてきたものを、一度白で覆い隠してみようと思っています。
油絵みたいに。

5. 今後活動をする上での直近の課題などはありますか?

クリエイションをデザインすること。
なんかいい感じ、にすることとも言えると思います

6. ここだけは譲れないマイルールはありますか?

曲線の横には必ず直線を添えることです。
直線の隣にある曲線が最も美しく見えると思うのです。
わたしがいつも考えるのは、曲線をより美しく魅せる直線をどう置くかということです。
女性的で男性的。
ノーブルでラフ。
静かで雄弁。
青くて赤い。
相反するものが境界上で混ざり合い流動して掴めない。
時には形を成したまま重なり合い、ズレた隙間に余白が生まれる。
心地の良いノイズは呼吸を孕み、外せないピースとなるのだと思います。

7. 最近ハマっていることや好きなことは何ですか?

ゲームです。
見る側で言うと、現実世界のパラレルワールドのような、ある種メタバース化したゲームの中で、複数のキャラクターをそれぞれ別の人格として動かす、という、自分の身体の枠を超えた内側の世界で複数の”わたし”が重なり合い形成される、外側の自分も巻き込んだ”わたし”という存在の拡張がおもしろいなと思って、ちょうど今、ゲームを一つのテーマとしたコレクションに取り組んでいます。
プレイする側で言うと、自身の思考の癖や物事への取り組み方、ストレスの受け方なんかが分かるので、生きることの練習になるなと思います。特に今やっているゲームは大体半年ごとに一回リセットが入るので、毎シーズンのコレクション制作に似ているなとも思います。

8. 好きなアーティスト・曲・作品などがあれば教えてください。

劇場版『デジモンアドベンチャー』(1999)です。
20分ほどのかなり短いアニメ映画です。
わたしの記憶において1番初めの「全然意味がわからないけど、なんだかちょっと恐くて、なんだかすごく鮮烈に記憶に残っているもの」だと思います。
意味がわからず何かが始まって、意味がわからないままに進んで、意味がわからないままに終わる感じ、でも、すごくいいんです。
大人になって初めて見た人がどう感じるかはわかりません。
ただ、ラヴェルの『ボレロ』が好きになると思います。

9. あなたは何オタクですか?

思考オタクだと思います。
脳が稼働している感覚が好きです。
止めどなく動き始めて、いろいろな思考の断片がつなぎ合わされていく感じ。
生きている感じがします。
大したことじゃなくていいと思うんです。
自分の中でよく薫っていれば。

10. 小さな“夢”を一つ教えてください。

小説を一篇、完結させること。

ID(イド)  2022年始動。デザイナーとディレクターによるデュオでコレクションを制作。

ブランド名「ID」は、ラテン語で“それ(id)”を意味する言葉に由来します。

コンセプトは、「Daydream for them(さめてみる夢)」

何かである。   何ものでもない。   ただよく薫る。   さめてみる夢。   

シーズンごとのコレクションに加え、映像作品やインスタレーションなど、媒体や式にとらわれずコンセプトを軸とした提案を続けています。

https://www.instagram.com/id.room1010